☆作品投稿☆「サツバツナイトガスライト(上)その7」☆短編☆


「…………帰ろう」
「何処へ?」
「!!」
気を緩めていたのか、ふと言葉を発してしまう彼女。シルエットで分かりにくいが、声が決定的に女のものだった。そう、かのニンジャはアカリなのだ。
そして相対するはシャープなデザインの青いジンベイに身を包んだ男。腰の左側には一本のカタナを携えているが、右手はだるそうにぶらぶらさせている。間違いなく彼はサムライだった。
「………お前がやったのは間違いない。断言してやる。見事な暗殺術だ、ガバナーの首の綺麗な断面を見ればわかる。

………んで、聞くがよ。どこへ帰るって?」

ビュッ、と空気を裂く異音の後、アカリのすぐ側にあるテーブルが真っ二つに割れた。
男は右手をぶらぶらさせたままだ。しかし、あまりに高速すぎて、常人ならば視認できない速度でカタナを振っていた。居合だ。
だがそれにアカリが動じることはなかった。アカリには今のが威嚇であると分かっていたからだ。更にアカリは既に戦闘体勢に入っており、男の隙を狙っていた。
「あくまでだんまりか。ハナから期待してるわけじゃないけどな」
暫しの沈黙。それを破ったのは男の方だった。
「じゃ〜ーあ、強制的に聞くしかないか」
刹那。
数え切れないほどの殺人剣と必殺のクナイが飛び交った。
カキン、カキンと古典で語られるチャンバラのような生温いものではなく、まるで1つの大砲、いや、ミサイルが着弾したかのような衝撃。そしてマシンガンでオーケストラを作るような勢いの連射音。轟音。
それらは音圧だけで充分人や物を殺すに値する凶器となった。
音圧で通常の30倍の耐久ガラスをぶち破り、爆風だけで部屋のインテリアは一掃され、機密書類や重要な文献の冊子、観葉植物、賞状や肖像画といった物ものは全て破壊された。
これが人知を超えた生命体。
ヒトの進化種。
ニンジャとサムライの対決である。