☆作品投稿☆「サツバツナイトガスライト(上)その5」☆短編☆

トーキョーメガロポリスのガバナー、金丸 キンジは時代錯誤を疑うほど清廉潔白だ。数少なくなった現実を直視する人々の支持を得、ヤクザやその他威力勢力を縛る法律を作ろうと東奔西走、活躍は目覚しい。
そんな彼は最近妙に胸騒ぎがしていた。
(気圧が低いのか……? いや、違うな)
彼の嫌な予感は当たる。
それは彼の幼少の頃に迫ることになる。殺伐、混沌とした現世において政治家はより精神を擦り減らして生きている。キンジの父もまたガバナーであり、辛辣な扱いや罵倒をニュースや街頭で小耳にはさむことがあった。それ故、キンジはガバナーを目指す頃からあらゆる機微に敏感だった。
彼は徐に椅子から立ち上がり、自室の窓に目をやる。
外に見えるはザ・マルノウチのトチョー・ハイスクレイパーから望む一億の絶景であるが、彼には怪しく光る獣の眼光のような不穏な光景にしか見えなかった。