☆作品投稿☆「サツバツナイトガスライト(上)その2」☆短編☆

ハンゾウゲート・エリアと呼ばれる地域にキッソウ・ハイスクールという名の知れた高校が存在する。
そこに通う影山 アカリは二年生だ。所謂花の女子高生というものだ。実際彼女は10人の健全な雄がいれば9人は目がパンチロックされてしまう美貌を持っている。
彼女は眠たげな眼を擦りながら朝のホームルームを受けていた。
「エー、では、ハイ。出欠をとりますので呼ばれたら返事をしてください」
いつもの担任だ。名前はなかなか覚えられない。確か三文字だった筈だが。
と、アカリが考えているうちにかなりの速度で出欠点呼が進んでいく。しかしアカリもその流れに置いていかれないようにするのはアピースオブケーキなので大丈夫だった。
ホームルームが終わるといつも話しかけてくるフレンズがアカリのもとへ来た。名前は確か月島 カナコだった筈と、うろ覚えなアカリであるが、ハイスクール入学時からずっと同じクラスで付き合いは長い。しかしアカリは癖で名前を忘れそうになってしまう。
「アカリちゃん、おはよ!」
「おはよー」
「うん、いつも通りだね」
カナコは明朗快活なアイサツをする。実際それは有効なコミュニケーション・テクニックである。それに対してメンタルが揺らぐ様子もないアカリは素っ気なく返す。しかしカナコは毎回こうなので気にしていない。
「ねぇアカリちゃん、今度グレートダイバーシティに行かない?」
「あぁー、いきなりだね。行きたいけど最近物騒だよ?」
アカリは急な切り出しに慌てることなく応対する。
グレートダイバーシティとは、臨海地域に連なる歓楽街だ。近海の生態系を根こそぎ他所へ移すことにより、平和に海水浴が楽しめると話題のスポットだ。
しかし最近はヤクザの抗争が活発化しているらしく物騒だ。そう言うとカナコは少しの思案のあと、ハッと顔を上げ満面の笑みを浮かべた。
「う〜ん、そうだよねぇ。でもそう言って今まで何にもなかったから今度も平気だよ!」
そう言ってグッと親指を立てて、大丈夫さをアピールする。それがアカリに効果があったかどうかは別として。
「まぁ、あそこは物騒さカットで謳ってるから多分平気かな」
カナコの提案を無碍にする訳にもいかないのでここで一応の同意を示すアカリ。
「よき!じゃあアカリちゃん、日にちは今週末だからね!」
よき!とは最近流行りのスラングだ。
1時間目がもうそろそろ始まるというところで、「またねー」と言いながら、カナコは教室から出て行った。1時間目は数学で、カナコはユウ・クラスだ。ほかにはシュウ、リョウ、ボンが存在する。ユウはシュウとリョウの間のレベルであった。ちなみにアカリはシュウ・クラスだ。